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■前書き
現在の障害者福祉において、「地域生活支援」と言う言葉が流行語となっています。「地域生活支援」とは俗語でしたが、これを現在の法律用語に当てはめると「居宅介護支援」という言葉になります。
しかし、この「居宅介護支援」と「地域生活支援」との言葉の意味には相違があり、俗語として広まっていった「地域生活支援」という言葉は、各地域毎に「地域生活支援センター」と呼ばれる公的なセンターの名称として使われ、「地域生活支援」という言葉が広範囲で認知された言葉となりました。
しかし、この本来の「地域生活支援」という言葉の意味が、支援費制度の始まりによって、「居宅介護支援」という行政支援の内容の意味合いと取り違えている風潮にあり、見失われている所も少なくありません。
また、障害者自立支援法により「地域生活支援事業」という事業分類もされるようになりました。
■居宅介護支援と地域生活支援とレスパイト支援
前書きに述べたように、「居宅介護支援」「地域生活支援」と言う言葉が出てきたのですが、この他に「レスパイトサービス」として広まった「レスパイト支援」というものがあります。この3つにはそれぞれ違った意味合いになってきているという事を知る必要があります。
”地域で生活する”を目標に掲げられ「地域生活支援」と題されて、民間のサービスとして始まったのが「レスパイトサービス」でした。
レスパイトとはその英語の意味の通り、”休息”を意味するものであります。当初始まった頃は、その”休息”と言う意味合いは薄く(主たる家族介護者の休息の意が強い)、地域生活支援もレスパイト支援も同じ意味合いでもありました。
しかし、「レスパイトサービス」が普及してきた昨今、本当の意味の「地域生活支援」という物が見えてきて、その違いが明確に現れつつあります。
ややこしくなるのですが、”休息”という意味を持つ「レスパイトサービス」は、法律用語である「居宅介護等事業」の内容を具体化するための起源ともなっており、その意味合いは似た物でもあります。
「レスパイトサービス」は”休息”の意味が示すように、障害児・者世帯の家族や本人の”休息”を与える目的が強く、その支援内容は困ったときの専用の施設を使っての「一時預かり」が起源となります。
しかし、この「一時預かり」という言葉は既存していた「児童デイサービス」(※本来のデイサービスは訓練の施設)と同じ物ととらえられがちで、よく知らない人には混同される事がありますが、「児童デイサービス」は施設の設備要件が定められておりますし、単なる一時的な預かりには対応できないものです。そこで、「一時預かり」を法的に認めようとした動きが、「居宅介護等事業」というホームヘルパーを派遣する制度なのです。
つまり、今まで民間事業所が行ってきた「レスパイトサービス」を法的に認めた支援にしようとすると、介護保険制度にあったホームヘルプのようなものしか無かったのです。
しかし、それによって出来た「居宅介護等事業」はあくまで、既に制度上にある施設を使っての「児童デイサービス」と違いを明確にしなければいかず、民間で始まった「レスパイトサービス」の事業内容の基本である場所を用意して「一時預かり」する支援は「居宅介護等事業」から対象外とされてしまいました。(利用内容によっては一部認められている市町村はあります)
これは、レスパイト用の施設まで保護者の方が送り迎えしたり、レスパイト施設のスタッフが送迎するやり方は「デイサービス」と違いを設ける事からも、「居宅介護等事業」ではないと隔されましたし、支援場所が在宅中心となる事で既に始まっていた老人介護と内容を大きく変える事は出来なく、「レスパイトサービス」の醍醐味でもあったレスパイト用の施設を軸とした「余暇活動」が、「居宅介護等事業」の対象外とされてしまい、「レスパイトサービス」はまったく別物の、民間サービスとなって残ることにもなってしまいました。
その、「余暇活動」は「居宅介護等事業」の移動介護(今は移動支援)で余暇活動が認められましたが、それは自宅から始まり自宅で終わるという在宅支援であり、場所を使っての一時的な預かりは、余暇活動がほとんどできない短期入所(ショートステイ)に一時的な預かりだけが出来るように、まったくレスパイト支援の内容は違いますが、一時預かりだけはそこに当てはめられました。
しかし、預かり場所を使わない事によって「居宅介護等事業」に”生活支援”の意味合いが濃く出てきました。在宅支援な事から生活により近い所を支援するからです。
こうなってくると、「レスパイト支援」「居宅介護等事業」の違いが出てきたのですが、”生活支援”の意味合いが濃い「居宅介護等事業」が平成15年度からの支援費制度で始まる事によって、今まで「レスパイト支援」と同じ意味合いを含んでいた、「地域生活支援」という言葉が「レスパイト支援」と「居宅介護等事業」の両方に絡み合ってしまいます。
よって、「地域生活支援」という言葉の意味が現在において、あやふやなものになってしまっているのです。が、しかし、私は「地域生活支援」とは「レスパイト支援」でも「居宅介護等事業」とも違う物であると言いたい。
■地域生活支援とは
”地域で生活する”事を目標に始まった”地域の中で”運動は、その地域で生活していくには居宅介護家庭(障害児・者の居る家族介護する家庭)の援助が必要不可欠でありました。少しでも家族の負担を軽くしよう、当事者のストレスを解消しよう。困った時には一時的に預かろう。といった要望が出てきました。
つまりそれは、地域生活をしていく上での家族介護困難時における、家族介護の”隙間や穴”を一時預かりの「レスパイトサービス」で埋める事により、地域生活を実現していこうという物でした。
それが、先に述べたように「居宅介護等事業」を作り出す物となったわけですが、結局その制度化された物でも生活の一部を肩代わりするだけで生活の”隙間や穴”を埋めるものでしかありません。
”休息”目的の「レスパイト支援」や、生活の一部を肩代わりする「居宅介護等事業」のままの支援で良いのでしょうか。
そうではないはずです。
地域の中で生活にはまだまだ知られていない潜在的に眠る問題があります。あたり前に、普通に…そう考えるとまだまだなのです。
「ノーマライゼーション」
そうです。本当に求めるものは何だったのでしょうか。求めていけない事などありません。
地域の中で当たり前に生活するという前例の無い事をこれからやっていくには、措置制度を当てにしてきた子育てや療育方法のままではダメなのです。地域の中で生活する事に対応できる人になってもらうには、とても大変であり家族だけでは負担が大きいのです。そして、新しい子育てや療育方法が必要とされるのです。
それを出来るのが、第三者が関わる「地域生活支援」なのです。特に学令期の成長過程にあるお子さんとの関わり方は、今後の地域の中で生活して行く事にとても大きな影響を与えます。
早い子では1ヶ月、遅くても3ヵ月でニードが変化します。普段の生活で精一杯の家族の中では、そのニードを叶えるどころか、見付ける事すら出来ない事もあります。見付けたとしても見て見ぬ振りして大きな成長のチャンスを逃す事すらあります。
ニードは一つ叶える事により次のニードが作られていくのです。これは生を与えられた者全てにある当たり前な出来事であり、自分でニードを解決できない援助の必要な人にとっては、それを援助する人がいなければ叶えることが出来ないし、新しいニードも生まれず人間らしく生きていけないのです。
それらのニードは個々によって違い多種多様であるため、専門性を備えた「地域生活支援」事業所の役割は大きな重要性を帯びてきます。つまり、「地域生活支援」の事業所は定期的な関わりを持ち、利用者のニードを俊敏に察知し、そのニードを叶える為に時間と労力を惜しまない事業所が望まれるのです。
そんな個々のニードを叶えるには、地域にある社会資源を発掘できるような介護以外の力もある事業所が望まれるし、より多くの知識と情報とネットワークを繋ぎ合せる事の出来る柔軟な事業所が望まれます。
一時的な介護や家事援助だけでは”生活支援”だと言えるでしょうか。それは単なる”お手伝い”でしかないのです。もちろん、手となり足となり目となる”お手伝い”や、家事をする”お手伝い”も必要ですが、それだけで満足してはいけないのです。
真の「地域生活支援」事業所の姿はそこにあります。
これらは「社会福祉士」の資格を持っているだけでは出来る事ではありませんし、そういった資格の有無や未認可・認可の事業所かどうかで判断できる事でもありません。
辞書を調べると”支援”とは「他人を支えたすけること。」と書かれています。そうです、「支えたすけること」なのです。「手伝う(人の仕事を助ける)」などという簡単な事とは違います。生活は障害のある人の”仕事”ですか?それは違います。
「他人の生活を支えたすける」事が”生活支援”なのだから、生活に密着できないのは「地域生活支援」ではないのです。また、”生活”という言葉を辞書で調べると、「暮していくこと」とあります。そう、”暮らし”なのです”生きる”ことではない事からも、生きていく為の必要最小限の支援ではいけない事が分かります。
現在は福祉変革期である事から、情報が錯綜し混乱しても仕方ありませんが、真の「地域生活支援」とは何かを見失わないようにしていただきたいし、障害のある人にとって運命共同体となれる正しい「地域生活支援」事業所を選び、良い事業所を育てなければいけません。それが障害児・者の未来を大きく左右する事になります。
最後に、良い「地域生活支援」事業所の基準を示したいと思います。
●「地域生活支援」事業所の選定基準
・介護や家事以外で動ける時間があり、適切な人材がいるか
・家族介護、子育てや療育に対して適切な助言と実践が出来るか
・地域にある社会資源を発掘でき、活用しているか
・異業種と交流があり対等に付き合っているか
・未認可や無資格でも優秀な人材がいるか
●障害者自立支援法で出てきた「地域生活支援事業」
当法律では、各市町村のニーズに合わせて各市町村の独自性を出したサービスを作り出してよくなり、それらの事業を「地域生活支援事業」と分類されます。この中には、移動支援も含まれるようになり、市町村任意ではあるが一般的な事業もいくつか国から提示されています。
しかし、国から提示されただけの「地域生活支援事業」をやっている市町村は、地域の実態を把握している市町村だとは言い難い物があります。独自の市町村サービスを作った所は、少なくとも実態を把握しニーズに答えていると言えるでしょうか。
良い「地域生活支援」事業所の無認可サービスが、市町村サービスとして変わっていける時代がやってきています。
<著者> ニードケアプロデュース
<初版> 2003年9月6日
<改定> 2004年10月21日 … 分り易く?したつもりです。
<改定> 2010年1月6日 … 現在の実情を反映させています。
※ 内容は随時、修正変更されますのでご了承下さい。 |
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